開業後のオフィス選び:自宅兼用か専用事務所か(行政書士試験受験生)

開業後のオフィス選び:自宅兼用か専用事務所か(行政書士試験受験生)

行政書士としてのキャリアをスタートさせるにあたり、多くの方が直面するのが「事務所を借りるべきか、自宅を兼用するべきか」という選択です。この重要な決断は、プロフェッショナルとしての立ち位置、経済的な負担、ワークライフバランス、そして将来のビジネス展開に大きく影響を与えます。

現役行政書士として、私自身もこの選択に直面しました。そこで今回は、私の経験を踏まえつつ、開業後の事務所選びにおける様々な側面を探り、これから行政書士を目指す方々へ向けた洞察とアドバイスを提供したいと思います。

1.よくある新人行政書士のパターン

新人行政書士の皆さんが名刺交換をすると、よく目にするのが自宅を兼ねたオフィスの住所です。「〇〇マンション△△△号室」といった表記がなされていることが多いですね。行政書士試験に合格する前は補助者として法人で働き、合格後もそこで働き続けるケースもあります。中には、私のように開業と同時にレンタルオフィスを借りる方もいます。レンタルオフィスでも立地や部屋の大きさによって事務所家賃と変わらないことも珍しくあります。

2.メリットとデメリット

(1)自宅兼用事務所

メリット

自宅兼用事務所の最大の利点は、何と言っても経費削減です。開業初期はなかなか案件を受けられず無収入が続くことも多いので、7万円から10万円程度の事務所家賃の節約は大きなメリットです。

また、通勤が不要になるため、交通費や時間の節約にもつながります。

デメリット

まずデメリットとして挙げられるのが、自宅で接客をする際には家族の理解が必要であり、また訪問者も私的空間への抵抗を感じることがあります。さらに、許認可に関わる個人情報を自宅で取り扱うことへの抵抗を持つ方も少なくありません。

また、プライバシーと仕事の境界があいまいになると、集中力が散漫になりがちで、書類作成など集中を要する作業に支障をきたすことも。加えて、紙の書類や事務機器などが必要とするスペースを自宅で確保するのは容易ではありません。

(2)専用事務所

メリット

専用事務所を借りることのメリットは、プロフェッショナルな士業としてのビジネス環境を提供し、顧客からの信頼を高めるという点です。

セキュリティが確保された環境で個人情報を含む機密書類を保管することができ、顧客に安心感を提供します。

また、自宅とは別の空間で仕事をすることで、家族に迷惑をかけず、プライベートな時間と仕事の時間を明確に分けることができます。

その他、意外と多くなる事務機器の設置や書類の保管にも十分なスペースを確保でき、仕事の効率化にもつながります。

弊所のOA機器①

デメリット

一方で、デメリットとしては、毎月の家賃が固定費として発生し、事業の初期投資として考慮する必要があります。さらに、自宅から事務所への通勤時間が必要になるため、その時間を仕事に活用できないという点も考えられます。

3.私の経緯

私自身、開業初期の約三ヶ月は自宅兼用の事務所を使用していました。その期間はクライアントを自宅に招くことはせず、自宅兼用であることをどこか隠しながら「出張サービス」という形で対応していました。しかし、その後は「建設キャリアアップシステムの認定録機関」の業務を依頼され、これを契機に名古屋市中区伏見にある個室付きのレンタルオフィスを借りることにしました。家賃は月額75,000円でしたが、確実な収入源としてその業務があったため、家賃の支払いに困ることはありませんでした。

弊所が最初に借りたレンタルオフィスの写真
最初に借りたレンタルオフィスの地図と外観写真
弊所が借りていたレンタルオフィスの室内写真
弊所が借りていたレンタルオフィス
共同のミーティングスペース
事務所引っ越し時の写真

そして2年が経過し、受任実績や顧客の利便性、通勤時間、出入国在留管理局へのアクセスなどを総合的に考慮し、さらに適した場所への事務所移転を決断しました。現在の事務所は、書類の保管にも困らず、来客が一度に4名程度あっても対応できるスペースを有しており、名古屋駅からも徒歩3分以内の立地ですので、大変便利になりました。

弊所の
弊社の事務所室内①
事務所室内の写真
弊社の事務所室内②
執務机の写真
弊社の事務所室内③
ミーティングスペースの写真

4.事務所を借りることを勧める理由

行政書士として開業するということは、新たなビジネスをスタートさせるということです。例えばラーメン屋を自宅のキッチンで始める人はいませんよね。それと同じで、自宅で様子を見ながらではなく、事務所を構えてお客様を迎えられる体制を整えることは、プロとしての基本ですし、それが起業家としての覚悟でもあります。

また、自分自身の仕事に対する意識も、きちんとしたオフィスがあることで変わってきます。家賃を支払うというプレッシャーもありますが、それがビジネスをしているという実感を強くするのです。

自宅兼用と単独事務所では、効率やコスト面で明らかな違いが生まれます。例えば、参考書籍や必要書類が手元にないために、相談者の元に再訪問する必要が出たり、それに伴う交通費が積もり積もって家賃を上回ることもあります。ですので、初めは小さなスペースでもいいので、事務所を持つことをお勧めします。

「家賃が払えないから借りない」と考えるのではなく、「家賃を払うために借りる」これがビジネスマインドだと私は考えています。

まとめ

  • 自宅兼用事務所は初期コストを抑えるが、プライバシーの問題や仕事の集中力に影響を与える可能性がある。
  • 個室付きレンタルオフィスは、立地やサイズによっては通常の事務所家賃と変わらず、信頼性とプロ意識の向上につながる。
  • 実際に事務所を借りることで、ビジネスの覚悟が示され、客観的なビジネス運営が可能になる。
  • 小さなスペースから始めても良いので、ビジネスとしての事務所を持つことを推奨。
  • 「家賃を払うために借りる」姿勢がビジネスマインドの表れ。

いかがでしたか。
行政書士試験の受験生のみなさんにとっては、合格後のことかもしれませんが、今のうちに開業後のことを薄々でもいいのでイメージしながら今の学習に取り組むことをお勧めします。また、そのようなことをイメージするとモチベーションの維持にも繋がります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
それでは、引き続き、試験勉強がんばってください。