行政書士は3なし(金・コネ・人脈)で開業はできる?

行政書士は3なし(金・コネ・人脈)で開業はできる?

2024年2月23日

1,準備資金と人脈

準備資金について

行政書士として独立開業する際には、他のビジネスと同様にもちろん初期投資が必要です。行政書士のライセンスを取得してビジネスを始めるという意味ではありますが、行政書士の業務は即座に現金収入が見込めるタイプのビジネスではありません。例えば、飲食店のようにオープン当日から毎日売り上げが発生するわけではなく、案件を受けてもすぐに収入が得られるわけではないのです。そのため、開業資金を全く準備せずに開業することは、非常にリスクが高いと言えます。ただし、家族を養う責任がなく、実家で生活しており、事務所の固定費用がかからないといった場合などは、月々の費用が少なくて済むため、大きな開業資金が必要ない場合もあります。

コネや人脈の重要性

行政書士の仕事は、人との関係によって大きく左右されることが多いです。特に、専門的な業務においては、既存の人脈やコネクションが安定した収入源につながることがあります。例えば、もし自分の親が自動車販売店の仕事に従事していれば、そこから車庫証明の仕事を始めることができ、それが更なる紹介に繋がる可能性があります。同様に、外国人との繋がりが以前からあれば、開業後すぐに在留資格関連の業務に取り組むことで、受任の機会を高めることができます。

しかし、ただ単に知り合いが多いだけの人脈があるからといって、それがすぐに仕事に繋がるとは限りません。特に行政手続きに関連する専門的な人脈がなければ、開業当初から多くの案件を期待するのは難しいでしょう。多くの知人がいても、それが具体的な業務に結びつかなければ意味がありません。一般的な職業の人々が行政手続きを必要とする場面は限られており、多くの場合、インターネットや直接の窓口相談で解決できることが多いのが事実です。

結局のところ、行政書士として成功するためには、専門的な業務で必要とされる人脈を持っていることが重要です。これは、クライアントが専門家に報酬を支払ってでも解決したいと考えるような案件に関連する人脈です。

2,私の経験

私自身の開業体験を振り返ると、開業時には入管業務や建設業許可に関連する人脈は一切ありませんでした。外国人の友人もおらず、建設業の経営者との接点もなかったため、最初はインターネットを通じた集客に頼るしかありませんでした。しかし、最初の数件のクライアントがきっかけとなり、徐々に人脈が広がり、今では以前の人脈との交流は途絶え、新たに構築した多国籍の外国人や外国人経営者との繋がりが豊富にあります。

開業資金については、独身で最低限の生活費と運営費で済むため、大きな資金を用意する必要はありませんでした。しかし、書士会費、名刺や販促物、パソコンや周辺機器、そしてビジネス用の服装などには一定の出費が必要で、開業初期には約100万円の費用がかかりました。

3,準備資金はいくら必要か?

行政書士として開業する際の準備資金について、具体的な必要経費を見てみましょう。最初に必要となるのが、行政書士会への入会時に支払う登録費用です。この費用は地域によって異なりますが、平均して約25万円程度になります。ただし、地域によってはこれよりも低い場合もあれば、高い場合もあります。

加えて、開業には事務所の表札や必要最低限の備品(鍵付きロッカー、応接セットなど)、職印やバッジなども必要になります。これらを含めても、最低限の開業準備費用は約30万円程度と見積もることができます。

さらに、日常業務で必要となる交通費や立替金(申請手数料など)、パソコンやプリンター、専門ソフトウェアや参考書籍などの費用も考慮する必要があります。これらの経費をすべて含めると、開業にあたっては最低でも50万円程度の資金が必要となるでしょう。

この計算は自宅での開業を想定した場合のものです。もし外部の事務所を借りる場合は、賃貸契約の初期費用(敷金、礼金など)や家賃、事務所の設備投資など、さらに多くの資金が必要となります。ちなみに現在の私の事務所の入居費用は約50万程度でした。

したがって、開業地や事業規模によって必要な準備資金は大きく変動することになります。開業を検討している方は、これらのコストを総合的に見積もり、適切な資金計画を立てることが重要です。

4,コネや人脈は必要か?

開業にあたって既存のコネや人脈があることは非常に有利ですが、必ずしも最初からそれらを持っている必要はありません。私自身の経験から言うと、運送業界での仕事から転身し、現在では外国人経営者を中心とした全く異なる人脈を構築しています。重要なのは、即座に行政手続きに繋がる人脈を持っているかどうかではなく、開業後に自分の業務や専門分野に合わせて新たな人脈を築いていけるかどうかです。開業前の経験や既存のコネクションも価値があるものの、開業後に積極的に関連分野のネットワーキングに参加し、必要な人脈を構築していくことが重要です。

5,金なしコネなしでの開業後はどうなる?

開業資金や人脈が乏しい状態で行政書士として独立開業すると、ビジネスが軌道に乗る前に生活費や運営費用が底をつく可能性が高くなります。このような状況では、何とか収入を補うためにアルバイトを始める行政書士もいますが、本業との両立は困難で、結局のところビジネスが継続できずに廃業に追い込まれるケースが少なくありません。

このパターンは実際によくある話であり、再起を目指して努力するかもしれませんが、ビジネスと副業の両立は多くの場合、持続可能ではないため、最終的には廃業という結果になることが一般的です。これは行政書士業界に限らず、資金計画と人脈がビジネス成功の重要な要素であることを示しています。

まとめ

いかがでしたか。
今回は行政書士試験合格後に開業を目指されている方に向けて参考になる記事を投稿してみました。
この記事で、特に私が言いたかったことは「行政書士はビジネスである」ということです。例えば居酒屋をオープンする場合、お酒が好きな知人友人が多ければ来店してくれて、結果それが売り上げに繋がります。一方で、居酒屋をはじめるにあたり、店舗にかかる費用、食材の仕入れ、広報といった様々な初期投資が必要となります。

中には「士業は身一つで稼げる」という考え方の人もいますが、そうではなく、「比較的コストがかからないビジネス」という言い方が正解だと思います。

行政書士試験の受験生の皆さんにとっては、少し先のお話かもしれませんが、今の内から開業後のことを意識しながら、日ごろの勉強に取り組むことをお勧めします。
それでは、引き続き試験勉強がんばってください。